医事課からみたあの作品―『無菌病棟より愛をこめて』の差額ベッド代編―

病室に生花の持ち込みは禁止です…

 

結論:差額ベッド代は、状況によっては支払う必要がないことがある。

 

医療事務をしていると、医療系の小説やマンガに「異議あり!」と唱えたい時があります。

 

例えば、加納朋子『無菌病棟より愛をこめて』(文芸春秋、写真は文春文庫版)。

急性骨髄性白血病にかかった筆者が入院し治癒するまでの、治療経過やその間の心情が繊細に描かれたドキュメントです。

筆者が急性骨髄性白血病となり緊急入院する際、病院から「差額ベッド代は1日2万8350円かかります。払えないなら別の病院を紹介します」と言われます。

結果、筆者は毎月何十万円もの医療費を病院に支払うことになります。

 

色々と話題(というか問題)になる差額ベッド代については厚生労働省の通知がありますが(この中では「特別療養環境室」として記載されています)
これを埼玉県のHPが綺麗にまとめているので是非ご参照ください。

 

埼玉県のHPより引用

 

『無菌病棟より愛をこめて』に話を戻すと、筆者は急性骨髄性白血病という免疫抑制剤などを使用する病気であるため、感染症に注意を払う上で個室は必須です。

となると「患者さん本人の『治療上の必要』」からの個室利用であり、差額ベッド代を支払う必要はなかったと考えられます。

 

病院によっては説明もなく個室に入院させ、差額ベッド代を徴収しトラブルになったりしているようですが、
患者さん側も「説明がない」「同意していない」なにより「個室で療養するに値する充分な理由がある」場合は、差額ベッド代に異議を申し立てていいんです。

 

 

そして、医事課としては、まずは説明と同意。そして、本当に差額ベッド代を取るべきケースかを配慮して請求する必要があります。

患者さんに「なぜ払う必要があるのか」と問われた時、答えられない請求、こちらの解釈が間違っている請求があると病院の信用を落としかねません。

 

 

ちなみに、差額ベッド代を最初から取らない病院というのも存在します。

ただし、差額ベッド代を取らない代わりに、患者さんには部屋の選択権はありません。

個室管理が必要な病状であれば個室を使うことができますが、そうでなければ大部屋になりますし、看護上の都合(ナースステーションやトイレが近い必要性、常時使う医療機器の内容、処置の頻回さ、患者さん同士の相性など)で入院期間中何度も部屋を変わることもあります。

 

入院して長時間を過ごす部屋だからこそ、お金を払って快適さを取るか、多少の不便は我慢し医療費の負担を軽くするか、患者としては悩ましいところではあります。