医事課からみたあの作品―『私、痔主になりました』の早期発見・早期治療―

 

結論:怖くて先延ばしになるのは分かるが、早く治療するに越したことはない。

 

普段、呼吸器系や循環器系など穏やか(?)な内科のカルテを読んでいる私は思います。

外科系怖いっっっ!

切ったり縫ったり繋いだりの世界も怖いが(カルテ画像が生々しくて苦手…)、婦人科系・泌尿器科系・肛門科系の「秘めたる部分」の治療がなんだか怖いっっっ!

その中でも、当院で件数の多い「痔核手術」はどういうことをしているのか分からないものの一つでした。

そもそも「痔」が分からない。

外痔核とか内痔核とかどういう状態?

裂肛は切ってしまった方が綺麗に治るっていうけど、切れたものをさらに切るってとんち?

メジャーな病気で、命に関わるものではないけど、肛門イコール「恥ずかしい部分」という意識がどうしても前面に出てしまう。

医事課職員として「痔」について知っていることは「痔核手術」は「短期滞在手術」だということだけでした。

 

※短期滞在手術とは

一般急性期病棟での治療はDPCという「この病気の治療には1日○点」という計算方法が主流なのですが、

このDPCの計算方法とは別に、「この病気の入院期間は短期(長くてせいぜい5日)だから、最大5日間は何日入院しても手術料込みで○点」という計算方法「短期滞在手術料」があるのです。

終夜睡眠時ポリグラフィー(睡眠時無呼吸症候群の検査)、下肢静脈瘤手術、ヘルニア手術、内視鏡的大腸ポリープ切除術などがそれにあたり、その中に「痔核手術」も含まれています。

ただし、この計算方法は平成30年の診療報酬改定で算定できなくなりました。チーン。

 

 

話は戻って、経験者でなければ全く様子の分からない「痔」について、発症・悪化から治療まで分かりやく自身の経験をマンガにしているのが、てらいまき『私、痔主になりました』(河出書房出版社)です。

作者は中学生の時に肛門に違和感を覚えてから痔をそのまま放置、民間療法や市販薬などで騙し騙し8年間が経過、ある日便器が染まるほどの出血を経験しついに肛門科の戸を叩きます。

作者同様、読者の私としても、「痔の治療怖い…」「恥ずかしい…」という思いで本のページをめくりましたが、治療は意外にも痛くもなくあっけらかんと終わるのです。

ちなみに初回の治療は「ゴム輪結紮術」。内痔核をゴムで縛るという、考えた人すげえなの一言に尽きます。

その後も治療が自己都合(…)で中断したり、再開したりしながら、作者は内痔核3個、外痔核1個、切れ痔一か所を完治させるのです。

 

このマンガの大きな意義は、やはり「早く治療に行くに限る」ということを身を持って知らせてくれるところです。

特に婦人科系・泌尿器科系・肛門科系の「秘めたる部分」は、どういう治療をされるか分からない不安、痛いことをされるのではないかという恐怖感、場所が場所だけに治療のモチベーションも下がり、病院に行く足は遠のきがちです。

しかし、マンガでの治療は終始無痛かつスムーズ、予後もとてもよく、「なーんだ」と拍子抜けしてしまうほどなのです。

てらいまき『私、痔主になりました』(河出書房出版社)より引用

 

 

最後に主治医の先生からのメッセージもマンガになっています。

どうしてもお尻見せるのはずかしいって思って放置しちゃうけどね
歯科検診くらいのノリで病院に来てほしい!
(中略)
若い子もたくさん来てるしほんと安心して来てほしいです
コワイことはせーへんから!

てらいまき『私、痔主になりました』(河出書房出版社)より引用

「コワイことはせーへんから!」(先生は京都人)という言葉を裏付けるような軽やかな治療の実際を、是非このマンガで多くの人に知ってもらいたいです。

 

 

おまけ

 

このマンガを読むかなり前に、医事課の同僚(男性)が、自分の職場である病院で痔の手術を受けるため一時期休みをとって入院したことがあったのです。

「いくら職員は当院での治療費に給付金が出るとは言え、顔見知りの職員に自分の痔の治療の一部始終をカルテで読まれるのは嫌だなあ」と思っていたりしたのですが、

 

後日…

 

 

痔の治療に大事なのは肛門周辺の血行促進だそうなのですが、円座クッションは逆に血行を悪くさせてしまうらしいのです…ってホンマ私に言われても知らんがな!